計画的偶発性の自己怪事
【第19回:呪いの言葉】
「1級キャリアコンサルティング技能士の大井宗太郎が人生を振返る中で見つけたキャリアサンプル」を不定期にお届けするコラムです。
「話し合えば解決する」は呪いかも――相談できない現実に寄り添うキャリア支援の視点
家業(ファッション専門店)に従事していた頃、常に父とは考えが合わず、提案は否定され、結果が伴わなければ、ケチョンケチョンに説教され、結果が伴っても賞賛することは決してありません。常に粗探しをしては、鬼の首を取ったように馬鹿者呼ばわりされます。社長に逆らうにも限界がありますから、私のメンタルはボロボロでした。
そんな親子関係を見かねて、「親子なんだから良く話し合ったら」とか「腹を割って話してみたら」とアドバイスらしきことを宣う取引先や知人が大勢いました。100回以上は聞いた「呪いの言葉」です。意見が合わなければ話し合うというのは、至極真っ当なことと私も思います。しかし、そこには、お互いが相手の言い分や意見に対して、聞く耳を持つことが絶対条件です。一方にだけ、それがあっても話し合いは成立しません。最初から自分の考えに固執して、人の意見を受入れる気がない人は、話し合いができません。私の父のような人は世の中に大勢いると思いますが、意外とそういう人との関りがなく、話し合えば、解決することを信じている方が一定数いらっしゃるようです。
世の中には、人の意見を素直に受け入れる、話し合いで問題解決することができない方が沢山いらっしゃいます。キャリアコンサルティングをする中で、上司や同僚への相談、家族への相談など周囲への相談を働きかけるような場面があるかと思います。私には、「上司や同僚に相談しましたか?」「ご家族には相談しましたか?」という言い回しは絶対できません。あたかもクライエントの周囲の人たちは、相談しやすい人、という前提でものが言えません。そもそも相談できないから私の所に来ているんじゃないか、そういう前提に立ちます。クライエントも相談できていないことを責められたように感じれば、関係構築は崩壊です。私なら「上司や同僚にも相談しにくいですよね」「ご家族には相談できないですよね」という言い回しを使います。
私が「呪いの言葉」から学んだ細やかなテクニックです。「呪いの言葉」に感謝です。話し合いができない、相談しても自分の意見を押し付けるだけ、そういう方で溢れています。あなたは違うと思いますが・・・
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