計画的偶発性の自己怪事
【第9回:吃音①】

「1級キャリアコンサルティング技能士の大井宗太郎が人生を振返る中で見つけたキャリアサンプル」を不定期にお届けするコラムです。

“読めた”の一歩が、“話せる”人生のきっかけ──勇気をくれた先生の一言。

 私は吃音者です。というと、私を知る人は驚かれるかもしれません。現在は、大学や講習会で講師をしたり、人前で話すことが仕事になっています。吃音者には見えないでしょう。でも今でも出にくい言葉があり、発しづらく、どもることはあります。

 小学校の国語の時間、教科書を順番に読みます。これが私には最大のプレッシャーでした。緊張するとどもる。普段、友達と遊んだり、寛いでいるとどもりはほとんど出ません。緊張が一番の引き金でした。人前で話す、教科書を読むなど緊張を伴うとアウトでした。幼少時、お金を拾って、交番に届けました。お巡りさんを前に緊張して、名前をきかれてもどもってしまいました。拾得者の名前は「大磯太郎」となっていました。

 小学校3~4年の担任の八田先生はそんな私の特質をよく理解していました。ある時、国語の時間、一人2~3行順番に読むところをなぜか私には1ページ読ませました。最初はどもってどもって恥ずかしいばかり、それが後半は、どもるものの最初よりはスムーズに読めるようになっていました。緊張感が緩んだのかもしれません。読み終わると八田先生は、「大井君、とても上手に読めましたね」

この一言で私のどもりをからかう奴はいなくなりました。私のどもりをマネする奴もいなくなりました。今でもこの時の八田先生のアプローチが忘れられません。哀れに思って回避するのではなく、敢えてつらいチャレンジをさせました。先生にとって勝算があったのか、博打だったかはわかりません。でも私には大きな勇気を与えてくれました。八田先生、ありがとうございました。55年経っても鮮明に蘇ります。

筆者プロフィール

筆者:大井 宗太郎
Sotaro Oi

1級キャリアコンサルティング技能士

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